気腫疽菌による死亡例・前例の無い報告2007年02月23日 00時03分36秒

牛「気腫疽菌」、世界初の人感染…千葉で男性死亡
(by 読売新聞さま)

千葉県の船橋市立医療センターは22日、同県内の50歳代の男性が、主に牛の病気の原因とされる「 気腫疽菌(きしゅそきん)」に感染し、死亡したことを明らかにした。  気腫疽菌は破傷風菌の仲間で、通常は土の中などに存在する。人への感染が報告されたのは世界初という。
破傷風の仲間と言う事は、嫌気的環境即ち土壌中に存在すると言う事で、亡くなられた男性は破傷風と似た経路によって感染したという事でしょう。
まさかこんな細菌に感染するなんて誰も予想できないし、ワクチン接種も何も出来なかった、異例中の異例と言えます。
ちなみに破傷風ならば三種混合などでワクチン接種を行っているはずですが、それも約10年で免疫は無くなるとの事。そういえば私が事故った時にもトキソイド接種をしました。
この気腫疽菌に対しては、ヒトのワクチンがあるのか、治療法はあるのか、また感染経路の解明やヒトからヒトへの感染はあるのかなど、ちょっと注意しなければなりませんね。
偏性嫌気性菌だし、ヒトからヒトへの感染は、余程のことが無い限り起こらないとは思うのですが、憶測の域を出ません。
もともとは家畜に好発するという事で、感染経路上に家畜などへの接触は無かったか、なども気になりますね。
もっとも下手に騒ぐと風評被害に発展してしまうので注意が必要ですが。

死亡した男性は2006年2月、高熱と胸の打撲傷で、同センターに搬送された。男性は搬送時、既に心肺停止状態で、すぐに死亡。のどの炎症を起こし、体全体が膨れ上がり、特に肺の膨張が著しかったため、男性の肺の組織を調べると、気腫疽菌が検出され、肺の筋肉が壊死(えし)していた。  同センターは、「気腫疽菌は人には感染しないというのがこれまでの『常識』だった。くわしい感染経路を調べることが今後の課題」としている。
なんとも凄まじい症状です。
破傷風の場合は筋肉の硬直から呼吸困難で死亡するというケースが多いのですが、気腫疽の場合にはそれ以上の様子。
一刻も早い対応が望まれますね。

保険医療費の節約の仕方2007年01月18日 00時01分31秒

WBSで医療のトピックでした。
昨今の医療の様変わりは凄いです。病院も患者満足度(PS?)を意識して、ホテルみたいな病院を造ってみたり。
アプローチはさまざまです。

そんな中気になったのが、自由診療
なるほど、と思いました。
現在破綻している健康保険財政を立て直すためには、支出を減らす事が第一です。
保険料収入とのバランスを考えると、如何にして保険料を払ってもらいながら健康保険を使わせないかが鍵。
そう考えた時、100%実費の自由診療の割合を増やせば解消の方向へ向かいます。

もちろん自由診療は高くつきます。
しかしこれは医療ビジネスにおいてチャンスです。
保険の効かない、しかし優れた医療というのは、大きな期待が集まります。
1回で1000円の保険診療が10回で完治のケース。
1回で10000円の自由診療が1回で完治のケース。
極論ですが、これだったら自由診療を選んだ方が、タイムコストの面で有利ですね。
自由診療は高いというイメージですが、トータルで考えると安く上がるのかもしれません。

WBSで紹介されたのは主にアンチエイジングや予防医学。
病気になる前に自由診療で予防してくれれば、保険も使わないので財政的にはプラスですね。
個人でやろうと思うと大変なので、企業が社員の健康診断にこのような方法を選ぶ事も出来るでしょう。人数が集まればコストダウンも出来そうですし。
今盛んに予防医学とかセルフメディケーションとか言ってるのは、個人のためだけじゃなく、保険財政的にも必要だからでしょう。
今さらな事ですが。大事です。
この考え方ならば、少なくとも患者は損をすることなく保険財政の建て直しが出来るわけですから。


リハビリ打ち切りなどという殺人的診療報酬改悪に比べれば雲泥の差です。
病気にならないためにも、体は鍛えておきましょう。

取りあえずこの記事見た時の秒数分だけ腹筋なw

ブランドと消費者意識2007年01月15日 23時50分51秒

TVCMなどでもさかんにジェネリック医薬品の宣伝をしています。
曰く、

同じ成分で同じ効き目、そして安い
桃太郎侍も頑張ってます。
しかし実際にはジェネリック処方数は伸び悩んでいるようですね。
そんなジェネリック医薬品について、今後どうすべきか?と言う事について考えて見ました。

まだまだ続く?ジェネリック医薬品の問題薬局のオモテとウラさま)からのtbです。



まずジェネリック医薬品とは何かということですが、手前味噌で恐縮ですが、この辺で触れていますので参考にしてください。

ジェネリック医薬品って何物?

大雑把に言えば、特許が切れたから今度は安く提供できますよ、と言う事です。

上っ面だけ見ればジェネリック薬品は安いし効き目も同じだから、いい事尽くめのように聞こえますね。
しかし、ここにジェネリック医薬品への不理解が見え隠れします。

前述記事にもありますが、ジェネリックが安い理由は 開発コストが少ない 厚生労働省への申請に必要なデータの一部についき省略可能なため、その部分のコストが安くなる。
医薬品のコストの大部分は開発コストなので、そこを一部省略できる事は非常に大きなコストダウンになる。
からです。
これは同じ有効成分である事の恩恵でしょう。
しかし、これも前述ですが、同じなのは 有効成分 それも、同じ化合物を目標に造ったというレベルの話です。
詳しくは ここ で。
だけ
です。
その他の部分は違います。
なのに同じ効き目と言い切ってしまうのはどうでしょう。
ここは「大体同じ効き目」というぐらいに捉える方が良いでしょう。
厳密に言えば違いますし、少なくとも同じ医薬品ではないです。

もう一つ、ジェネリック医薬品が先発品と大きく違う点がありますね。
情報の少なさです。
先発品は膨大な開発データもあり、また先発品として実際に使われてきた臨床データが豊富です。
しかしジェネリック医薬品は、それが無い。なぜなら有効成分が同じと言うだけで別の医薬品なので、先発品のデータをそのまま引用していいわけではないからです。
ついでに言えば、先発品のメーカーに比べてジェネリックメーカーは企業として小さいので、バックアップ体制に疑問符が付く、という点もあります。

このジェネリック医薬品の問題点については、 こちら で非常に詳しく述べられています。
さすがプロだ、違うなぁ・・・。コメントつける必要も無いぐらい解りやすい。
必読です。



さて、ジェネリック医薬品が先発品とは別物であることはご理解いただけたと思います。
では、なんでジェネリック医薬品は敬遠されてしまうのか?

医療関係者からはこのような意見をよく見かけます。

・先発品に比べて情報量が少なく、信頼性に欠ける
・メーカー自体の体制や能力に不安
・今までお付き合いしてきたメーカーさんとの義理

3番目は患者様から見ればどうでもいいことです。
前述の「情報の少なさ」が直接影響している意見ですね。
今まで使っていた新薬については、メーカー側にも臨床データの蓄積があり、実際に処方する医師の側にも情報がある。
それをジェネリックに変えると言う事は、全く新規の医薬品を使用するのと同じような心的プレッシャーがあるのでは?
そのぐらい慎重になることはいい事だと思いますが。逆にジェネリックだからと無頓着に使われる方が怖いです。

一方、患者側から見るとどうか。これは私が患者として感じた事ですが。。。

・今まで使ってきた医薬品が安心
・安い医薬品は、品質に問題があるような胡散臭さがある
・いちいちジェネリックにするのがめんどくさい

あと、単発の処方が多いから、薬代は大して気にならない、という個人的に重要なファクターも感じます。
1、3番目は、長期間の服用となる慢性疾患の患者さんだとそういう意見もあるのでは?
自分の体で「この薬は大丈夫」と言う事が分かっているところに、ジェネリックという新しい薬を使うことへの不安はあるでしょう。

患者から見れば安い医薬品は、安かろう悪かろう、というマイナスイメージは避けられません。
それをTVCMで「同じです!」と連呼するのは果たして有効なのか、逆に胡散臭さを煽っていないだろうかと心配です。

さてこの2者を見ると、キーポイントは「信頼性」です。
そしてその信頼性を担保する要件の一つがブランドです。



ブランド。どこそこが造っている、という製造元情報です。
このブランドというものは、消費にとって大きなファクターであることは言うまでもありません。

消費者は、買おうとする製品の情報を100%知る事は出来ません。
具体的には、その製品が及ぼす影響と言うものを、完全に予測する事は出来ません。
まあそれはメーカーも同じですが。
そうなると消費者はどこを検討するかといえば、過去のデータです。
どこそこのメーカー故障が少ないとか、初期不良が多すぎるとか、そういった情報が蓄積され、それは一つの潮流になる。
それがブランドです。

日本人はブランド志向、とはよく言われますが、私はブランド志向であることは悪くはないと思います。
医薬品に限らず、自分の好きなブランドを買う事は特に問題がない。
高級ブランドを妄信する事がしばしば批判の対象になりますが、別にそれも問題があるとは思えませんが・・・
ブランド”だけ”を考えて、商品の中身を知ろうとしない姿勢はあんまりよくないですけど。
ブランドというのは、会社の顔であり信用を示すものです。消費者がそれを購買動機にする事はごく自然です。

さて医薬品においては、名だたる有名製薬企業の製品は「老舗ブランド品」と言えるでしょう。
対して、ジェネリックメーカーが製造したジェネリック医薬品は、「 新参ブランド品 「generic」はノーブランドって意味ですが、ジェネリック医薬品はきちんとした会社が製造した医薬品で、そのメーカーのブランドであると言えます。
だからジェネリックって言葉はあまり適切ではないとする人もいます。
「後発医薬品」という言葉が最も適切かと思いますね。
」です。
この「老舗」と「新参」の違いが大きく影響します。

老舗はそれまでやってきた社会的地位や評判などがあり、「どういう会社なのか」と言う印象がはっきりしています。
逆に「新参」はそういった土台がありませんから、どういう会社なのか分からない。メーカーとしての顔がはっきりしないから、その製品に対しても懐疑的になる。当たり前のことです。
コーラは普通に飲んでも、見た目こそ似てても聞いた事の無いものは飲むのを躊躇ってしまう。
HONDAのバイクは安心して買えるけど、名も無いカスタムビルダのワンメイクマシンはちょっと買えない。
そんな感じです。

詰まるところ、 ジェネリック医薬品はあんまり信用されてない 、という事です。

逆に言えば、ジェネリック医薬品の日本における普及率を上げるのならば、如何にして信用を得るか、ではないでしょうか。



では、ジェネリック医薬品の普及、信用の獲得はいかにして行なうかと言えば。
地道な営業努力しかないかと思います。
法整備ももちろん必要は必要ですが、結局はメーカー自ら信用を勝ち得ないといけません。
法的に無理矢理処方させるのは意味の無いことです。

では営業努力とは何をすべきかというと、宣伝対象を明確にすべきではないかと思います。
TVCMで踊ってればいいというものではありません。
こと医薬品に関しては、消費者(=患者)への販売形態が他業種とは著しく違います。
(処方せん)医薬品は、医師の処方箋が無いと、患者は買えません。
患者の選択権はある程度束縛され、医師によるパターナリズムが大きなウエイトを占めています。
つまり、購入製品の選択権は、患者と医師の両立(それもやや医師の方にウエイトがある)状態です。
となれば、患者よりも医師に対する働きかけに重きを置くべきでしょう。
もちろんそんなこと既にやっているとは思いますが。。。
少なくともTVCMに金をかけるよりは効果があるかと思いますよ。
良くも悪くも、日本ではまだパターナリスティックな診療は根強く、ジェネリック医薬品の使用に際しては、医師が勧める事が一番効果的だと思います。
薬剤師が言ってもいい事でしょうが、現状では医師の一言がもっとも"効く"と思います。

となればいかにして医師、或いは薬剤師や他の医療関係者の信用を得られるかと言えば、これまた地道な営業努力でしょうね。
ジェネリック医薬品の懸念材料は「臨床データが少なくて不安」「メーカーとしてのバックアップ体制が不安」という2点だと思います。
となれば、その不安を解消するようなデータを揃えて提示する。これしかないです。

ジェネリック医薬品普及の特効薬はありません。
新参のメーカーがいきなり市場に出てきて信用してくれといっても無理な話です。
時間がかかる事は覚悟しているはず。
短期的にはマイナス収支になるかもしれませんが、長いスパンで考えるべきではないかと思います。



ここ最近、急に言葉が出てきたジェネリック医薬品ですが、確かに価格は下がります。
しかし価格と引き換えに他のスペックを落としてはいけません。
この辺、ジェネリックメーカーさんには是非とも頑張っていただかないといけません。

ジェネリック医薬品を処方する側、服用する側としては、ジェネリック医薬品は新しい医薬品だという心構えでいた方が、いろいろな意味で安心できると思います。

ジェネリック医薬品の登場が、患者様の利益になることを期待します。

サルビアの花、ってあまーい2006年11月13日 12時46分44秒

【薬食審指定薬物部会】違法ドラッグに33物質指定薬事日報社さま)からのtb。

改正薬事法において薬物乱用防止が明文化されたことを受け、違法ドラッグ、いわゆる脱法ドラッグだと思いますが、その成分として33の物質が指定されました。
tb先記事に、一覧がありますのでそちらもご覧ください。

亜硝酸誘導体、ニトロアルカン類でしょうか。これらは揮発性があるでしょうから、吸入するタイプですね。亜硝酸イソアミルは狭心症患者にも処方されているかと。
体内においてEDRF(NO:一酸化窒素)を遊離して血管拡張を促しますので、狭心症にも適応があるわけですが、その作用機序が奇しくもドラッグとしても利用されているわけですね。
亜硝酸エステルは急激に吸えばショックを起こしますし、メトヘモグロビン血症リスクもある。また発がんリスクも否定できないのでは?と思います。
用法用量を明確にしていれば問題ないと思いますが、乱用したときにはその限りではないでしょう。

語尾に「T」がつくもの・・・トルエン?
まあ、トルエン自体が結構問題が多いですので、その誘導体も規制対象にはなるでしょう。


2006.11.18 訂正
「T」はトリプタミンの略で、指定薬物はトリプタミン誘導体でした。訂正いたします。
脱法ドラッグにはトリプタミン誘導体が多いみたいですね。
そういえばLSDやらもインドール骨格を持つし、SAR的にどうなのかは分かりませんが、インドール骨格を持つ化合物は生理活性が強いものがやはり多いようですね。



そんな中、ひとつ気になるのが「サルビア」。

サルビアといえば学校の花壇で育てられる花としてポピュラーで、花を千切って吸うと甘い蜜が味わえるために乱獲されて荒れ放題になる花ナンバー1なわけですよ。
そんなお花が規制対象・・・?
かと思ったら、普段私達が目にする観賞用のサルビアは「Salvia splendens」。
一方規制対象となっているサルビアは「Salvia divinorum」。
同じ”サルビア”種であっても、別物のようです。ほっ。

植物にも有害な成分を含むものはたくさんあります。
あまり楽しい印象ではありませんが、彼岸花は毒がありますし、ケシを観賞用と間違えて育ててしまったと言うことも昔はあったみたいです(ヒナゲシは大丈夫です)。
安易に植物を口にしてしまうのはやはりそれ相応の危険性を伴う行為であったと思うと、小学校の時のサルビア乱獲も色んな意味でほめられたものではないですね。反省。



薬事法にも薬物乱用防止が明文化され、今度さらに規制体制は整っていくと思います。
使用する側も、医薬品に限らず化学物質という点から、十分に注意して使う必要がありますね。
特に合成系の仕事の場合、無数の化合物を扱いますが、せめてカタログの法規制の項目に目を通すぐらいはした方が良さそうです。学生だとあんまりしないですけどね・・・
MSDSに目を通すとさらに吉。

ODなんて論外です。これも取締りの対象にすべきではないかと思いますよ。

姥捨て山と子捨てポスト2006年11月10日 00時03分03秒

全国初「赤ちゃんポスト」設置へ 熊本市の慈恵病院
(by 産経新聞さま)

微妙に話題が関連するので、 生けとし生けるものぶれーくだんすさま)にもtb飛ばしとこか。



事情があって親が育てられない新生児を受け入れる「赤ちゃんポスト」(通称・こうのとりのゆりかご)を、熊本市の慈恵病院(蓮田晶一院長)が年内にも設置する計画を進めていることが9日、分かった。ドイツですでに導入されているが、実現すれば国内初となる。

 同病院は「あくまでも緊急措置で、捨ててもらうのが目的ではない。新生児の産み捨てや、不幸な中絶を少しでも減らしたい」と説明している。
そう、あくまでこれは緊急措置、暫定措置であるという点を忘れてはいけない。

分かりやすく言い換えれば、何も考えてねーバカが赤ちゃんポイ捨てするから赤ちゃんの命を救うためしょうがなく設置したということ。
頭の悪い親の都合で作ったわけでは当然無い。

しかし、だ。
このような施設が出来ること自体は、状況が許さないがために致し方ないとは言え、歓迎すべきだと思う。
無計画さだけが理由とはならない。もっと深刻で、許すまじ原因によるものもあるだろう。
そのようなケースであれば、施設の利用動機としても、致し方ないのではないかと思う。

いずれにせよ、利用されること自体があまり望ましい事ではないのは確かだが。



さてこの施設であるが、設立自体は良いが、その運営方法については少々疑問符が付く。

計画によると、病院の窓を外部から開けられるようにした箱型の「ポスト」を設置。内部は保育器と同じ状態に保たれ、新生児が入れられるとナースステーションで警報が鳴る仕組み。 (略)  同病院の蓮田太二理事長(産婦人科)が平成16年にドイツを視察、「赤ちゃんを育てられないと悩む人が、匿名で預けるところがあれば」と、準備を進めてきた。ドイツにならい、ポスト内には考え直した親が子どもを引き取りに来た際の手続きを書いた紙なども入れるという。


匿名。

正直これはどうかと思う。
確かに子供を捨てに来る(敢えてこう書く)親からすれば、まともな人だったら後ろめたいと思うだろうし、DQNだったらウザいと思うだろう。
それに事情によっては自分の素性を明かされること自体に不安を感じる人もいるだろう。

しかしそうもいかない。親子関係のほぼ完全な喪失は問題が多い。
親子関係の発生は、法的には出生届の提出が基点となる(と思われる)ので、ポストに来ると言う事は当然そんな届出などしておらず、従って親子関係は法的には発生しない。
つまり、親子関係は全く存在せず、法的に赤の他人となる。
書類処理上だったらそれでいいかもしれないが、新生児の医療面から言えばそれはまずい
もしその子供が何がしかの病気・障害があったとしたら(それが原因で捨てる事も想定できるが)、その親の病歴などは子供の治療上重要なデータである。
その他、将来的な諸々の問題を考えると、完全な親子関係の喪失、というか親の手掛かりが無いのは非常に困るのである。
例えば骨髄移植や臓器移植を必要とするような疾病だとすれば、まずは生物学的な親を当たるのが近道である。

やはり、子供を捨てに来る親の情報と言うのは、全く取得しないわけにはいかない。
もちろんその情報は厳格に管理され、病院外の組織によって監査され、決して無闇な使われ方をしてはならない。流出など持っての他。
もしこのような情報が、滅多な事では表に出ないにしても”ある”ならば、已むに已まれぬ事情の際、子供がその親の元を尋ねる手掛かりにも出来る。それを封殺するのはいささか心苦しい。
それにDQNの親がウザがって捨てたと言うならば、その子供が親の顔面を変形するまでぶん殴る事の手助けにもなろう。



斯様な施設には、両手を挙げてというわけにはいかないが、設立は賛成する。

しかし、やはり根本の問題と言うのは無視できず、それに関しては

責任取れねーならハナから子供作んな!!

という、至って使い古されたような意見である。

命と言うものはその個体のもので、余程の事情、例えば死刑など特殊な例を除き、他人によってその火を消されることなどあってはならないし、その価値を決められるべきではない。
ましてその命を生み出すための性行為、国生みと言ってもいいが、快楽のためだけにあるのではない、という当たり前の事を忘れないようにしなければならない。
当人の本意であるかどうかが問題となるので断定ははばかられるが、この世に生まれた命と言うものは、その命を生み出した者が大切にしなければならない。
そういう責任があるのだと思う。

ペットや人間その他の多種多様な生物、命の有り様は色々だが、重さは同じ。
自分の都合や欲望で振り回していいほど軽くない。
日影なす氏と似たような意見だ。ペットと人間の差はあるが。
人命に限らず、あらゆる命は地球より重し。



冒頭の子捨てポスト。
設立自体は良いが、そもそもそんな施設が必要になること自体を恥じるべきではなかろうか?
それが無計画さゆえの傲慢にしろ、犯罪行為にしろ、已むに已まれぬ事情にせよ、そういった事態は根絶しなければ。

生まれてくる子供のために。