ブランドと消費者意識2007年01月15日 23時50分51秒

TVCMなどでもさかんにジェネリック医薬品の宣伝をしています。
曰く、

同じ成分で同じ効き目、そして安い
桃太郎侍も頑張ってます。
しかし実際にはジェネリック処方数は伸び悩んでいるようですね。
そんなジェネリック医薬品について、今後どうすべきか?と言う事について考えて見ました。

まだまだ続く?ジェネリック医薬品の問題薬局のオモテとウラさま)からのtbです。



まずジェネリック医薬品とは何かということですが、手前味噌で恐縮ですが、この辺で触れていますので参考にしてください。

ジェネリック医薬品って何物?

大雑把に言えば、特許が切れたから今度は安く提供できますよ、と言う事です。

上っ面だけ見ればジェネリック薬品は安いし効き目も同じだから、いい事尽くめのように聞こえますね。
しかし、ここにジェネリック医薬品への不理解が見え隠れします。

前述記事にもありますが、ジェネリックが安い理由は 開発コストが少ない 厚生労働省への申請に必要なデータの一部についき省略可能なため、その部分のコストが安くなる。
医薬品のコストの大部分は開発コストなので、そこを一部省略できる事は非常に大きなコストダウンになる。
からです。
これは同じ有効成分である事の恩恵でしょう。
しかし、これも前述ですが、同じなのは 有効成分 それも、同じ化合物を目標に造ったというレベルの話です。
詳しくは ここ で。
だけ
です。
その他の部分は違います。
なのに同じ効き目と言い切ってしまうのはどうでしょう。
ここは「大体同じ効き目」というぐらいに捉える方が良いでしょう。
厳密に言えば違いますし、少なくとも同じ医薬品ではないです。

もう一つ、ジェネリック医薬品が先発品と大きく違う点がありますね。
情報の少なさです。
先発品は膨大な開発データもあり、また先発品として実際に使われてきた臨床データが豊富です。
しかしジェネリック医薬品は、それが無い。なぜなら有効成分が同じと言うだけで別の医薬品なので、先発品のデータをそのまま引用していいわけではないからです。
ついでに言えば、先発品のメーカーに比べてジェネリックメーカーは企業として小さいので、バックアップ体制に疑問符が付く、という点もあります。

このジェネリック医薬品の問題点については、 こちら で非常に詳しく述べられています。
さすがプロだ、違うなぁ・・・。コメントつける必要も無いぐらい解りやすい。
必読です。



さて、ジェネリック医薬品が先発品とは別物であることはご理解いただけたと思います。
では、なんでジェネリック医薬品は敬遠されてしまうのか?

医療関係者からはこのような意見をよく見かけます。

・先発品に比べて情報量が少なく、信頼性に欠ける
・メーカー自体の体制や能力に不安
・今までお付き合いしてきたメーカーさんとの義理

3番目は患者様から見ればどうでもいいことです。
前述の「情報の少なさ」が直接影響している意見ですね。
今まで使っていた新薬については、メーカー側にも臨床データの蓄積があり、実際に処方する医師の側にも情報がある。
それをジェネリックに変えると言う事は、全く新規の医薬品を使用するのと同じような心的プレッシャーがあるのでは?
そのぐらい慎重になることはいい事だと思いますが。逆にジェネリックだからと無頓着に使われる方が怖いです。

一方、患者側から見るとどうか。これは私が患者として感じた事ですが。。。

・今まで使ってきた医薬品が安心
・安い医薬品は、品質に問題があるような胡散臭さがある
・いちいちジェネリックにするのがめんどくさい

あと、単発の処方が多いから、薬代は大して気にならない、という個人的に重要なファクターも感じます。
1、3番目は、長期間の服用となる慢性疾患の患者さんだとそういう意見もあるのでは?
自分の体で「この薬は大丈夫」と言う事が分かっているところに、ジェネリックという新しい薬を使うことへの不安はあるでしょう。

患者から見れば安い医薬品は、安かろう悪かろう、というマイナスイメージは避けられません。
それをTVCMで「同じです!」と連呼するのは果たして有効なのか、逆に胡散臭さを煽っていないだろうかと心配です。

さてこの2者を見ると、キーポイントは「信頼性」です。
そしてその信頼性を担保する要件の一つがブランドです。



ブランド。どこそこが造っている、という製造元情報です。
このブランドというものは、消費にとって大きなファクターであることは言うまでもありません。

消費者は、買おうとする製品の情報を100%知る事は出来ません。
具体的には、その製品が及ぼす影響と言うものを、完全に予測する事は出来ません。
まあそれはメーカーも同じですが。
そうなると消費者はどこを検討するかといえば、過去のデータです。
どこそこのメーカー故障が少ないとか、初期不良が多すぎるとか、そういった情報が蓄積され、それは一つの潮流になる。
それがブランドです。

日本人はブランド志向、とはよく言われますが、私はブランド志向であることは悪くはないと思います。
医薬品に限らず、自分の好きなブランドを買う事は特に問題がない。
高級ブランドを妄信する事がしばしば批判の対象になりますが、別にそれも問題があるとは思えませんが・・・
ブランド”だけ”を考えて、商品の中身を知ろうとしない姿勢はあんまりよくないですけど。
ブランドというのは、会社の顔であり信用を示すものです。消費者がそれを購買動機にする事はごく自然です。

さて医薬品においては、名だたる有名製薬企業の製品は「老舗ブランド品」と言えるでしょう。
対して、ジェネリックメーカーが製造したジェネリック医薬品は、「 新参ブランド品 「generic」はノーブランドって意味ですが、ジェネリック医薬品はきちんとした会社が製造した医薬品で、そのメーカーのブランドであると言えます。
だからジェネリックって言葉はあまり適切ではないとする人もいます。
「後発医薬品」という言葉が最も適切かと思いますね。
」です。
この「老舗」と「新参」の違いが大きく影響します。

老舗はそれまでやってきた社会的地位や評判などがあり、「どういう会社なのか」と言う印象がはっきりしています。
逆に「新参」はそういった土台がありませんから、どういう会社なのか分からない。メーカーとしての顔がはっきりしないから、その製品に対しても懐疑的になる。当たり前のことです。
コーラは普通に飲んでも、見た目こそ似てても聞いた事の無いものは飲むのを躊躇ってしまう。
HONDAのバイクは安心して買えるけど、名も無いカスタムビルダのワンメイクマシンはちょっと買えない。
そんな感じです。

詰まるところ、 ジェネリック医薬品はあんまり信用されてない 、という事です。

逆に言えば、ジェネリック医薬品の日本における普及率を上げるのならば、如何にして信用を得るか、ではないでしょうか。



では、ジェネリック医薬品の普及、信用の獲得はいかにして行なうかと言えば。
地道な営業努力しかないかと思います。
法整備ももちろん必要は必要ですが、結局はメーカー自ら信用を勝ち得ないといけません。
法的に無理矢理処方させるのは意味の無いことです。

では営業努力とは何をすべきかというと、宣伝対象を明確にすべきではないかと思います。
TVCMで踊ってればいいというものではありません。
こと医薬品に関しては、消費者(=患者)への販売形態が他業種とは著しく違います。
(処方せん)医薬品は、医師の処方箋が無いと、患者は買えません。
患者の選択権はある程度束縛され、医師によるパターナリズムが大きなウエイトを占めています。
つまり、購入製品の選択権は、患者と医師の両立(それもやや医師の方にウエイトがある)状態です。
となれば、患者よりも医師に対する働きかけに重きを置くべきでしょう。
もちろんそんなこと既にやっているとは思いますが。。。
少なくともTVCMに金をかけるよりは効果があるかと思いますよ。
良くも悪くも、日本ではまだパターナリスティックな診療は根強く、ジェネリック医薬品の使用に際しては、医師が勧める事が一番効果的だと思います。
薬剤師が言ってもいい事でしょうが、現状では医師の一言がもっとも"効く"と思います。

となればいかにして医師、或いは薬剤師や他の医療関係者の信用を得られるかと言えば、これまた地道な営業努力でしょうね。
ジェネリック医薬品の懸念材料は「臨床データが少なくて不安」「メーカーとしてのバックアップ体制が不安」という2点だと思います。
となれば、その不安を解消するようなデータを揃えて提示する。これしかないです。

ジェネリック医薬品普及の特効薬はありません。
新参のメーカーがいきなり市場に出てきて信用してくれといっても無理な話です。
時間がかかる事は覚悟しているはず。
短期的にはマイナス収支になるかもしれませんが、長いスパンで考えるべきではないかと思います。



ここ最近、急に言葉が出てきたジェネリック医薬品ですが、確かに価格は下がります。
しかし価格と引き換えに他のスペックを落としてはいけません。
この辺、ジェネリックメーカーさんには是非とも頑張っていただかないといけません。

ジェネリック医薬品を処方する側、服用する側としては、ジェネリック医薬品は新しい医薬品だという心構えでいた方が、いろいろな意味で安心できると思います。

ジェネリック医薬品の登場が、患者様の利益になることを期待します。

コメント

_ なす ― 2007年01月16日 08時05分37秒

メーカーとの付き合いってのが普及しない原因の一番最たるところだったりとか思って見たりしてw
てゆーか、医者(もしくは薬剤師)が勧めない限り、よっぽどの人でなければ、わざわざ混んでいる病院とかで言わないでしょうと。しかも、具合悪くて行っている訳だしそこまで頭回らなくね?
それと、「同じです」て言う連呼は俺も胡散臭さを感じるねぇ。
まぁ、ジェネリック医薬品がどういうものかある程度わかってるからってのは有るかもしれないけども。

俺的には臨床データの少ないものは避けるので自ら進んでは使わないだろうなぁ。
勝手に処方されていたらわからんけどなw

_ @DRK ― 2007年01月16日 19時34分54秒

>なす
メーカーの義理というか、先発メーカーとジェネリックメーカーの争奪戦だからな、いろいろあんのよ。それで先発メーカーが公取に注意受けたりもしたみたいだし。
患者の自発的なジェネリック選択は、TVCMによる洗脳である程度効果が出ている。ただそれも例のCMの受け売りをそのまま信じさせられているからこそ効果があるもので、相違点を知らされればその数は変わるだろうな。
大切なのは「先発」≠「ジェネリック」であることをジェネリックメーカーが認めた上での営業活動をすべきだと思うのだわ。
「同じ」じゃねーだろと。

>具合悪くて行っている訳だしそこまで頭回らなくね?
風邪とかで単発のものな。そういうものが果たしてどれだけの利益を上げられるのか疑問。患者負担も大した事無いし、ジェネリックにする意味は薄い。
一番収益的に狙い所なのは、常に薬を飲み続ける慢性疾患。言い方悪いけどお得意様なわけだ。その辺を(まともな)ジェネリックに置き換える事は大いに意味がある。
適材適所ってやつよ。

_ くま☆ ― 2007年01月19日 16時48分40秒

TBありがとうございました。
テレビのCMなどを通じて患者さんへ直接訴えかけるのも方法の1つでしょう。しかしそれよりも「信頼して使えます」ということを意思をはじめとする医療従事者に訴えていくことの方が、時間はかかりますが必要なことなのかもしれませんね。

_ @DRK ― 2007年01月19日 18時30分23秒

>くま☆さま
そうですね、「医療関係者」に「信頼」される事が、多角的に見て近道だと思います。
急がば回れ、です。
パテント切れのジェネリック移行は決してマイナスではないと思うので、今後の動向を見守りたいと思います。
東大の松木教授の受け売りですが、「ジェネリックならではのメリット」と言うものをしっかり理解する事、メーカー、ユーザー共に必要だと思います。

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