今熱く熱く熱く熱く燃え上がる酒2006年04月15日 16時21分10秒

エタノール

基本的な有機化合物にして溶媒、またアルコール飲料に含まれる酩酊状態の原因物質。
酒です。

しかし最近、エタノールを”燃料”として使おうと言う動きが活発になっています。



現在、世界中の産業には石油が欠かせません。
しかし、石油の埋蔵量は当然ながら有限であり、あと数十年もすれば無くなってしまいます。
そのため石油資源の確保は国家間の重要課題であり、そのためにバカな小競り合いも起きています。

特に石油消費の多くを占めるのがガソリン、燃料です。
逆に、この燃料を代替できれば、石油の使用量を大幅に削減できます。



石油に代わるエネルギー源として、自動車分野では様々な取り組みがなされ、幾つかの候補が上がってきました。
そんな中、なぜエタノールなのか。

エタノールの利点、それはバイオマスという言葉で表せます。
エタノールはバイオ、即ち生物由来のエネルギーとみなす事が出来るからです。

エタノールの製法を見てみますと、化学反応によるものと発酵によるものがあります。
科学的にはエチレンにニッケル触媒下で水を付加させて作られます。

CH2=CH2 + H2O ―――→ CH3CH2OH
           cat.(Ni)

発酵によるエタノール製造は、グルコースを発酵させてエタノールを得ます。
所謂酒造りの方法です。

C6H12O6 →―→―→―→ CH3CH2OH
       Fermentation

発酵法だと出来上がりが水-エタノール混合物なので、その後の蒸留などエタノール分離操作が大変だったりしますが、この辺は各分野でいろんな方法が出来てきています。


さて。
エタノールを発酵法で製造できると言う事は、単純に考えるとエネルギーの再生サイクルが成り立つ、という事です。

発酵法の場合、原料の多くはサトウキビです。サトウキビや砂糖は国際的に見て過剰生産状態で、結構余っているみたいです。
つまり原料には困らない、という事です。
太陽の光を浴びてすくすく育ったサトウキビが、ブドウ糖を経てエタノールになる、それを燃やしてエネルギーを取り出す、燃やした時の二酸化炭素はサトウキビに還る、という事です。
効率の問題はありますけど、エネルギーのリサイクルモデルとしては分かりやすい。

世界的なサトウキビ生産国であるブラジルは、エタノールビジネスに相当力を入れていることから、未来の新燃料として期待が持てます。



バイオエネルギーとして注目のエタノールですが、実際に使う場合にはどうなるか。
エタノールを燃料に用いる事にはいくつかメリットがあります。

1.バイオエネルギーである事で、エネルギーのリサイクルになっている。
2.構造中に酸素原子を含むので、燃焼に有利(ドラッグカーレースなどのニトロメタン燃料も、酸素原子が多いからあれだけ良く燃えて爆発的なエネルギーが取り出せる)。

2については少々疑問で、酸素を含むから酸素供給源はありますが、エタノール自体の発熱量はガソリンよりも低いので、燃費は悪いそうです。パワーについても疑問符付です。



もちろんエタノールであることのデメリットもあります。

1.エタノールは吸湿性が高いので、タンクの改造やインフラ整備にお金が掛かる。
2.”良く燃える”から空気中の窒素も燃やし、NOXが発生しやすい。

エタノール、というかアルコールはかなり吸湿性が高く、IPA(イソプロピルアルコール)はタンクの水抜き剤に使われるほどです。そのため貯蔵中に吸湿しないような燃料タンク、またインフラ整備が必要になります。
またNOXが発生しやすいそうで(これには賛否両論あり)、排ガス中のNOX除去のための触媒が欠かせませんが、エタノールの排ガスは温度が低めだそうで、触媒が十分に働くには温度が足りず、十分にNOXを還元できないと言う事も指摘されています。

エタノールを”供給”する体制は比較的注目されますが、それを使いこなすのには課題が多そうです。
なお。
エタノール100%で使えれば一番良いのですが、現状は10%ガソリンに混ぜたものがアメリカなどで使われ、日本では「揮発油等の品質の確保等に関する法律」に引っかかるので、エタノール含量は3%までとなっています。


間違いなく来る石油枯渇に備え、エタノールが注目されているわけですが、代替エネルギーは他にもあります。
ざっと上げるだけでも、メタノール、ソーラー、LPガス、天然ガス、電気、ハイブリッド、燃料電池・・・
どれも素晴らしいメリットと、克服しなければならないデメリットを併せ持っています。
この中で石油に頼らなくても良さそうで、排ガスクリーンなのはソーラー、電気、燃料電池じゃないでしょうか。

エネルギー効率や出力などの問題を無視すると、一番クリーンなのはソーラーカーだん吉です。晴れてさえいれば走れる。全部をソーラーにしなくても、エアコンとかラジオ、CDなんかのアクセサリー類だけでもソーラーエネルギー化すれば、少しはエネルギー節約になりそうです。
電気も排気ガスが全くでない。電気を作るのにCO2は出ますが、ガソリンに比べれば環境には優しいかな。
燃料電池。これは水素と酸素から電気を作る、水の電気分解の逆反応が原理です。現在一番進んでいるのはこのシステムだそうな。



石油は間違いなく枯渇します。
そうなる前に、エネルギーを確保する事は至上命題とも言えるでしょう。
供給、効率、出力、環境負荷、いろいろクリアすべき課題は多いのですが、各メーカーさんの今後に期待したいところです。

新しいエンジンが出来たあかつきには、是非ともバイクで実現してほしいです。
逆に、エンジン寸法やシステムで制約を受けやすいバイクで実現できれば、優れたエンジンと言えます。

コメント

_ なす ― 2006年04月17日 11時21分16秒

エタノールも自由取引になるし、これからの産業だぁね。
ま、そのうちガソリン含有量も増やせるようにするようなことも囁かれてたし、法整備も進めてくんじゃないかなぁ、と。
ブラジルの発酵エタノールは安いしあまってるくらいだからいいんじゃ。
早いところエタノール混ぜて燃量代安くなってほしいものだ。

_ @DRK ― 2006年04月19日 10時53分12秒

燃費とパワーがどうなるかが疑問。
安くなってもパワーが不足するようでは、アクセル踏み込むから余計に燃料食う罠。

7MTでクロスミッション化。パワーロスを極限まで減らすテクニックを身につけ、運転者の技術向上w
は冗談にしても、燃料特性に合わせたマッピングなんかも必要になるのではないかな。

_ なす ― 2006年04月19日 16時57分16秒

エネルギー的には変わらないらしいけどな。
実際に運用してる国もあって、上々らしいけども。
ただし、車に限るがw
ま、実際やってみないとわからんわな。

_ @DRK ― 2006年04月20日 11時28分22秒

ガソリンとエタやメタは比重が変わらないからエンジン内部に導入される量は多分変わらない。となると、完全燃焼したときに発生する気体量が多いほど圧縮が強く高トルクとなる。
そう考えると、炭素数7~8のガソリンの方が発生気体量は多いからパワーが出る。
逆にアルコールだと、同じパワーを出すためには多くの燃料をシリンダーに導入しないといけない。

商用レベルで動かすなら必要最低限のパワーで十分だけど、ファンライディング、ファンドライブという視点からでは疑問符がつく、という事よ。
CARTがメタノール燃料使っているからエンジン開発次第でどうにかクリア出来そうだけど、現行のガソリン車に入れたときにどうなるかは微妙かな。

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