ロキソニンのスイッチOTC化2009年11月28日 23時04分06秒

久々に医療関連のニュース。当blogは蕎麦blogじゃありませんよ?

【一般用医薬品部会】「ロキソニン」がOTCに‐医療用と同一成分・分量 薬事日報さま)へtb。

ついに来たか、という印象です。
昨今のスイッチの流れは本当に目覚しいですね。一時期はプラバスタチンNaもOTCに、なんて話もあったぐらいですし。
これでセルフメディケーションが少しは促進してくれればいいのですけど。
ただこうもインフルエンザが流行っている最中にロキソニンを投下してしまうと、インフルエンザ脳症の件数が微増するような気がしないでも無いですが・・・
いずれにせよしっかりとした説明が必要なのは言うまでもありませんね。

さてロキソニンというと、以前自らの体験談としてのエントリを掲載しました。

NSAIDと胃粘膜保護剤の関係~実体験~

ロキソニンに限らずNSAIDには胃障害がつき物ですが、胃粘膜保護剤では胃潰瘍リスク低減のエビデンスが無いという話です。
自覚症状としての胃部不快感などは治まるのですけど。

このOTCのロキソニンを販売するに当たっては、恐らく胃の保護がキーポイントになるかと思います。
医療用でロキソニンを使ったことがあって、且つ胃弱の方の場合は、当然胃薬が必要になりますよね。
そうした際に一般的な胃粘膜保護剤を勧めるのは果たしてどうか。
そういえばロキソニンのメーカーさんはいい胃薬をOTCでお持ちですよねw

ロキソニンとガスター10の「2 in 1」パッケージにしてもらえると、ユーザーとしても便利なのですが。

ロキソニンは患者認知度も高くて売上高も大きな商品になるかとは思いますが、注意点が少なからずあります。その辺使い方をしっかりと指導しないといけませんね。

車椅子の操安2008年06月26日 22時43分49秒

電動車椅子による救急事故が多発しているような。

以前車椅子生活を送っていたので、車椅子については多少の経験がありますが、案外難しいものです。
車両の基本性能、走る、曲がる、停まる。直進するのは両輪の回転差がモロに影響するし、曲がるのも然り。ブレーキングに関してはすこぶる抜けやすい荷重のせいか簡単にロックします。
電動ならばその辺はクリアできそうですが、逆に操作ミスで重大事故が発生しやすい。

取りあえずの提案として、自動車メーカーのノウハウを車椅子にフィードバックするのはどうでしょう。
座席のホールド性を上げて転落を防ぐ為に、RECAROに協力依頼とか。
急激なブレーキングによる前のめり防止に、スリッパークラッチを設けるとか。
段差や坂道に応じて速度やブレーキングを制御するとか。

競技の世界では車椅子もかなり進化しているようですが、病院などの車椅子は、あまり変わってないように思います(病棟などでのメンテナンスもあまりなされておらず・・・)

これだけ自動車技術が進化しているのだから、アクティブセーフティの観点を車椅子にも導入すべきではないかと思います。



2008.06.29 追記

技術的アプローチも大事ですが、やはり操作者の技術向上というのが一番と言うのは、ずっと変わらないでしょう。
ある程度若い人ならば勝手に覚えていきますが、高齢者はなかなか慣れないのではないかと思います。しかし車椅子の扱い方などは看護師さんなどが軽く教える程度でしょうか?深く突っ込んだ講習なんてのがあるのかどうか分かりません。
私はPTさんに軽く教えてもらいましたが、病棟内だけだったし深くは教わってません。

これは言わば教習所内での技能講習です。実際に公道に出るのは危険ではないでしょうか。
事故が多発しているのならば、車椅子の運転講習もあってしかるべきだと思います。

ちなみに私が経験で学んだちょっとしたコツは「フォークリフトと逆」です。
フォークリフトは前が重たいので、下り坂の時はバックで進みます。
車椅子の場合は、構造上後ろにつんのめりやすい。ということは、上り坂はバックが安全ということです。
これを実践するだけで安全性はずっと向上すると思います。

あと芝生には入るな、ですねw

その資格に期待されているのものは2008年01月31日 23時03分26秒

復帰記念に少し身の上話+αでも。

法律と安全形にならない有象無象(改)さま)参照。


2年間の強化訓練リハビリを経て日常生活に困らない程度に回復し、仕事に復帰しました。
ブランクが長いので就職活動も少し掛かりましたが、何とか仕事に。調剤薬局に勤務しています。
今まで製薬(というか化学メーカー)だったので、調剤は全くの未経験。体の状態もあいまって非常に大変です。

特に大変なのは、その業種の”常識”に慣れていない事ですね。
今まで電子天秤といえば0.01mgオーダーのものだったのが、10mgオーダーのものに。使用前の校正もなんだが・・・
分包機の”掃除機”ってのもカルチャーショックです。それ絶対残ってるよね?みたいな。

tb先の記事にあるピッキング業務については、ようやく実際に経験するという事になりました。
それを踏まえた上での私の意見は、実は 以前書いたものと変わってません
現行制度としてピックは薬剤師がやるべきですが、本当に単純なピックだけなら、テクニシャンでも出来なくは無いと思います。
棚から確実に医薬品を取ってくるのと、棚から確実に試薬を取ってくるのと、患者様の生命を背負っているという大きな違いはありますが、業務としては似ています。
監査がしっかりすればいい、という考え方も分からなくはありません。
現行制度化で医療事務さんとかにピックさせるのはダメですけどね!

ただ、実際にテクニシャン制度導入で心配なのは、監査者に負担が集中する点ですね。
ピックをテクニシャンがやるというのは、ピック者が処方箋そのままで医薬品をかき集めてくる、という事になりますね。という事は、それだけ監査の層が薄くなる事につながります。
薬剤師がピッキングをする時には、その処方が真っ当かどうかを見ながらになりますよね。といいつつ自分はまだそんなにスキルが無いので難しいのですが・・・
それを無くしてしまうのは、即ちリスクを増大させてしまうって話になります。いくら経験のある薬剤師の監査であっても、抜けるときは抜けますし。

そして、これは杞憂に終わってほしいと思う事なのですが、登録販売者制度の二の舞というか、同じ轍を踏んじゃうという事になるのではないかと不安です。
今既に登録販売者制度は結構どっちらけな空気流れてますし・・・実務経験無いと資格取れないのに資格が無いと実務経験が積めないと言うのはこれ如何に。
テクニシャン制度自体は、ちゃんとやってくれるなら文句は言いませんが果たして。単純にアメリカの真似事をして後で後悔する事になるんじゃないかと不安になりますよ。

何が良くて何が良くないのか。規制緩和と規制強化。そのバランスはしっかり見極めていかなければ。

今そこにある命と未来にあるべき命と2007年08月11日 22時53分34秒

インド高裁によるノバルティスの請求棄却に関して
薬事日報さま)へのtb。

Summary
グリベック メシル酸イマチニブ(Imatinib mesilate)錠。
慢性骨髄性白血病などの原因となる遺伝子の異状により生じた
遺伝子産物(チロシンキナーゼ)の阻害剤。
の発売元であるノバルティスファーマ社が、インドにおいて物質特許申請を行っていたが、却下された。同社はこれを不服とし控訴したが、8月6日、チェンナイ高等裁判所はこの訴えを棄却。

ノバルティス社は、以下3点を主軸に訴えを起こしていた。

<1>
インド特許法の「既知の物質にマイナーな改良を加えた医薬品については、著しい効果の改善につながるものでなければ特許性を認めない」という表現は曖昧であり、特許承認権限者に専横的な権限を与える事になり、インド憲法につき違憲である。
<2>
物質特許申請に対し却下の裁定を下した特許庁の人物と、特許庁の裁定にについてインド知的財産権上訴委員会(Indian Patent Appellate Board:IPAB)に訴えた際の担当官は 同一人物 当時特許庁に所属し、後にIPAB担当官になったと思われる であり、担当者の変更を要請。
<3>
インドの特許法は他のWTO加盟国の特許法と異なり、TRIPS協定に違反するものである。

この3点につき、チェンナイ高裁は、「インド特許法はインド憲法に違反していない」「WTOの問題は当法廷の裁定権限外である」とした。またIPAB担当官の問題もこれを棄却した。

なおノバルティス社の今回の提訴につき、某国境無きNGO団体など多数から、提訴の取り下げが要求されていた。

この判決について、ノバルティス社の意向は未発表。←いまここ


(内容に不備があるかもしれませんので、ご確認ください)

というものです。
当blogにおいても同様のケースについての記述がありますので、ご参照ください。

命と薬と思想の価値(1)
命と薬と思想の価値(2)
命と薬と思想の価値(3)
ジェネリック医薬品って何者?

最初から書くと非常に長いので、上記記事をご一読されている事を前提として始めます。



至極大雑把に背景をかいつまんでみると。

新薬には20~25年はパテントがあり、ライセンス料の分上乗せされて価格はどうしても高くなってしまう。

特許は基本的に国内法であるが、TRIPS協定により他国であっても勝手に製造販売は出来ない。

しかし、例えば抗HIV薬のように絶対必要であるにも関わらず、新薬が高くて十分に供給できないケースがあるので、TRIPS協定を一部曲げて、パテント期間内であっても、安価に ジェネリック医薬品 ジェネリックとはいうものの、新薬のパテントが終了していないのでコピー薬というニュアンスが正しいかと思われます。
もっともコピーとはいえど品質に関してなんら言及していない事にはご留意下さい。
を製造販売できるようにしよう。
ドーハ宣言
(内容に関してはご確認ください。個人的な所見ですので保証はいたししかねます)

私個人のスタンスとしては、

「ドーハ宣言はあくまで緊急避難的措置である」
です。
(ドーハ宣言自体もそういうニュアンスのようですが、ソース見当たらず。。。)

以前はHIV治療薬の話で、今回は違うジャンルの医薬品です。が、中身はほとんど一緒です。
そしてこの点について、以前と考えは変わっていません。

「なぜ新薬にパテント料が発生するのか考えて欲しい」
「その場凌ぎの対応だけでは、長期的視点から言えば全員死んでしまう」

未だそのことを理解できていない団体さんがいらしたのは、非常に残念です。
腹が減ったからといってニワトリを食ってしまったら、もう卵は産んでくれません。



断っておきますが、「緊急避難」であるならば致し方ない、と言う点は、消極的ながら賛成です。
患者さんに医薬品を確実に供給する事は、医療人ならば誰もが分かっていることです。
そして金勘定なんてのは患者さんに押し付けてはいけない問題です。

この問題について最も不服だと思うことは、製薬企業が自腹を切っていれば済む事だという流れです。
気持ちは分からないでもありません。目の前の患者を救うことが医療人の最優先事項です。
しかし。
それだけしか考えていないようでは、真に救う事にはならない事に気が付いているのでしょうか。

これはもはや国家的、インターナショナルな取り組みの問題です。
一企業が自己犠牲の精神で奉仕すれば解決する、なんて甘い問題じゃありません。
本来は 国を挙げての取り組みで解決すべき問題 一企業に対しての自腹の強要なんてのは責任転嫁の極みでしょう。
文句を言う事はあっても、金を出す事は無い団体さんの思考は停止していませんか?

私は、公的資金の注入が最も筋の通った解決だと思っています。
医薬品はTRIPS協定に基づき、正規の価格で提供。
まず国がそれを一度買い上げ、価格をジェネリック並にして国民に配布。
国家予算の財源に関しては、ODAなりの援助で賄う。
そうすることが最もスマートだと思います。
少なくとも、一企業に対する自腹の強要よりは真っ当な意見だと思ってます。
そしてそのような国家の取り組みに対してのアドボガシー運動こそNGOなりNPOのすべき事ではないのでしょうか。

相手を見誤ってはいませんか。
のはずなのに、なぜか一企業へのバッシングに終始しているのは、なんとも理解しがたく時間の浪費だと思わざるを得ません。
焼け石の水の対症療法だけでは何も解決しません。むしろそういうことを主張していくのがNGOの役割じゃないんですかね。
少なくとも、訴えを取り下げろと言う要求は、お門違いに思えて仕方ありません。

この問題を、銀行と貧困層の方々という図式に置き換えて考えた場合。
「金が無くて困っている人がいるんだ。銀行は自腹でそういう人たちに金を配れ」
と言っているのと似ています。
金を配って貧しきを救う。大層ご立派ですが、それで銀行がつぶれたらどうしましょう。



基本スタンスは変わりませんのでこの辺で終わりますが、最後に。

暗いと不平を言うよりも、進んで明かりをつけましょう。
明かりのつけ方を知っているなら尚更です。

放射性医薬品によるがん性疼痛緩和2007年05月01日 11時21分17秒

【医薬品第二部会】β線で癌の疼痛を緩和‐新しい放射性医薬品を了承 薬事日報さま)へtb。

放射性医薬品による骨がんの疼痛緩和です。

がんはある程度経過すると浸潤や転移します。転移は主に血液やリンパ液を介して行われますが、血流に乗って骨にもがんは転移します。骨転移です。
原発巣が肺、前立腺、乳房の場合には、特に骨転移しやすいそうです。

骨は骨吸収と骨形成を絶えず行い再構築(リモデリング)によってその形態を維持しています。今ある自分の骨は、壊すのと造るのがバランスしているから維持されているという事ですね。このバランスが崩れると骨粗しょう症などになります。
骨の維持に欠かせないのは、もちろんカルシウム。私も毎日錠剤飲んでます。なかなかくっつかないけど。
そのほかリン、VitaminDなど様々な栄養素が必要です。

骨転移したがんは、骨の神経に存在する痛覚受容器を刺激したり、大きくなったがんが神経そのものや血管を圧迫したり、またがんに対抗するための免疫応答により、さまざまな発痛物質が遊離したりして、疼痛となるそうです。

そこで登場するのが放射性医薬品。塩化ストロンチウム(89SrCl2)。
ストロンチウムはカルシウムと同じ第二族元素・アルカリ土類金属。カルシウムに似た挙動を示すという事で、静注などで投与すると、骨に集積する性質があります。

ストロンチウムの安定同位体は、原子量88ですが、それより一つ多い89Srはβ崩壊によりベータ粒子(=電子)を放出し、自身は89Y(イットリウム)となります。

89Sr → 89Y + e- (+反ニュートリノ)

この電子線によって、がん細胞を照射死滅させる事が疼痛効果の発現だと考えられている模様。詳細は確定していないそうです。
同時に、転移部位には免疫応答によってリンパ球が集まりますが、これも障害を受ける事で、発痛物質の遊離を阻害する事も作用機序の一つと考えられているそうです。
疼痛緩和というとモルヒネなどのオピオイド系麻薬性鎮痛薬が頭に浮かびますが、これらとは一線を画した作用機序ですね。
その本質は抗がん作用による体積減少と言えそうで、純然たる鎮痛薬、とも少々違いそうです。

モルヒネでコントロール出来ない疼痛にも奏効するということで、期待できますね。
反面、疑問もあります。
電子照射がそもそもの作用機序と思われますが、同時にDNA損傷も起こしているでしょう。そのバランスは大丈夫なのか不安です。
骨転移部は代謝が促進されているので、ストロンチウムは優先的にがん細胞が存在する部位に集積するとは思いますが、通常の部位にも分布はしています。
そもそも抗がん剤の類は"諸刃の剣"ですので、十分な注意が必要です。まして放射性医薬品ですから、なおのこと神経質になってしまいますね。
注射剤なので患者さんがご自分で服用、という事はまだないとは思いますが・・・
また放射性医薬品という事で、患者さんへの服薬指導も入念且つ慎重になりそうです。
「核アレルギー」は確かに存在します。