サリドマイドの新たな可能性2006年08月09日 16時20分04秒

販売停止のサリドマイド、がん治療で承認申請
(by 読売新聞さま)

サリドマイドといえば、昔睡眠薬として主に妊婦の方が繁用したががために、その催奇形性によりたくさんの奇形児被害が生じた医薬品ではあります。
その催奇形性については、サリドマイド自体がラセミ体であり、そのS体に催奇形性があるという事です。
なので、理論的には光学分割などでR体のみにすれば催奇形性は無くなる、と安直に考えてしまいますが、Wikipediaの情報では体内でR体がS体に容易に変換する、おそらくは簡単にラセミ化してしまうのだと思います。
そう考えると、安全性については慎重にならざるを得ないです。
カルボニルα位の水素だから簡単にエノール化して光学活性もすぐに失われそうですが・・・胃酸中ならなおさら。ここを別の置換基に変えておけば、結構簡単にラセミ化は防げそう。でも生理活性に大きく影響するかも・・・。

そんな忌まわしき記憶のあるサリドマイドですが、どうもがん治療に用いられるとのこと。
この情報自体は結構前からありましたが、とうとう承認か?、と言ったところです。
サリドマイドには血管新生阻害作用があり、それががんの増殖を抑制すると言う事です。奇しくも催奇形性発現とほぼ同じ作用機序によって、新たな道を歩む事になろうとは。
今度は同じ過ちを絶対に起こさないようにしなければなりません。

薬害は絶対にあってはならないことなのですが、それでも起こってしまっています。
未知の相互作用による予想が困難なものから、薬害エイズのように防ごうと思えば防げた人災まで。
これらを教訓に二度と薬害を起こさない事が、医療の担い手に課された使命です。

まずは、サリドマイドの適正使用が円滑になされる事を望みます。

コメント

_ なす ― 2006年08月09日 18時51分11秒

カルボニル基のα位の置換反応か。。。
なんか別のところが簡単に反応しそうな感じがするなw
多分、狙ってそれのみをとりだすとなると相当難しいもんになる悪寒。
ま、元置換反応研究者手伝いのさびた頭で考えたことですがねw
サリドマイドか。
まだ時期尚早な気がするんだがなぁ。。。

_ @DRK ― 2006年08月09日 19時32分04秒

選択的に置換は面倒だ。先に保護しときたい。

サリドマイドを使うのはちょっとな。誘導体の方が良いかと思うが。
DRP(Drug Reprofilinhg Platform)は、開発コストは確かに減る(新規化合物に必須の毒性試験とかが省略できる)けど、ネームバリューがあまりにもマイナスに偏っているものをわざわざ使うのも。。。
もっとも、催奇形性は妊婦さんに気をつければ当座は大丈夫だと思うけど。

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