ジェネリック医薬品て何物? ― 2006年07月14日 20時01分24秒
後発医薬品の情報提供に苦慮
(薬事日報さま)からのtb。
ジェネリック医薬品について。
本ブログのこの辺の記事と合わせてお読みください。
↓
命と薬と思想の価値(1)
命と薬と思想の価値(2)
命と薬と思想の価値(3)
TVCMなどでも「ジェネリック医薬品」を盛んに宣伝しておりますが、そもそもどういうものかというのは詳しくは語られていません。
薬学知識の無い一般の患者様からみれば、「効き目は一緒でも安い医薬品なんだ、こりゃいいや」というイメージが真っ先に浮かぶでしょう。
だがしかし。
本当にその謳い文句は正しいのか。
そもそもジェネリック(generic)という言葉には「ノーブランド」とか「無印」なんて意味があります。
前述の本ブログ記事にも書きましたが、最初に開発した医薬品にはパテントが発生します。そのライセンス料はもちろん価格に反映しますが、20~25年経てば特許期間が終了し、他のメーカーも販売可能になります。これがジェネリック医薬品です。
昔の言い方で言えばピカ新とゾロです。
何でジェネリック医薬品が安くなるのかと言うと、そもそもジェネリックの薬価が新薬より安くなるように定められている、というのもありますが・・・
ライセンス料が発生しない事や、新薬に比べて承認のための試験数が少ない事、つまり医薬品開発の手間が少ない事などから、価格を安く抑えることが出来ます。
まあ、この辺は前の記事にも書いてあるのであまり深くは触れません。
さて、このジェネリック医薬品は値段も安くて患者にとってはとてもメリットの大きいものなのですが、デメリットもあります。
いや、デメリットというよりはそもそもジェネリック医薬品というものへの間違った認識、でしょうか。
最初に忘れないで頂きたいのが、新薬とそのジェネリック医薬品は同じものでは無いと言う事です。
これはtb先記事の
新薬の時にDMF申請した製造方法よりも、効率的でローコストな製造方法を検討し、製造コストを下げられる事がジェネリック医薬品の強みです。
しかし。
製造方法が違うと言う事は、出来たものは別物、と言う事です。
安定性や吸収性、つまり物性もバイオアベイラビリティも同一ではないです。同等ではありますが。
さらに、医薬品の有効成分というと、それ一つでしかイメージしないと思いますが、実際には微量な不純物が存在します。
この不純物のプロファイルというのは製造方法や設備が変われば別物になります。
それ故、「同じ成分」というのはあくまで「同じ成分を最終化合物として製造しました」ぐらいの意味でしかありません。
それが新薬よりも高純度かもしれないし純度が下がっているかもしれませんが、別物である事には変わりありません(純度下げる事は無いでしょうが・・・)。
また、下記のような指摘があります。
この辺はちと補足しますと、新薬は3phaseの治験を行い、健常者及び当該疾病患者に対して、薬物動態やら治療効果やら副作用やらをきっちり調べるのですが、ジェネリックについては健常者投与で体内動態を調べて新薬と同等だと言えればOK、ということです。
もちろん体内動態が同等なら薬効も同等、という原理は科学的判断に基づくものですが、実際にジェネリック医薬品の治療効果は調べていない、という突っ込みも当然うなずけます。
不純物プロファイルが違えば、新薬には無い不純物によって副作用が出たり出なかったりすることも予想できますし。
このように、ジェネリック医薬品と言うのは、単に安いだけの医薬品ではないと言う事をしっかりを覚えておくべきです。
tb先の記事で一番気になったのがこの部分。
これはマイナスのプラセボ効果ではありますが、逆にプラスに働く人もいたりして。
新薬メーカーから見れば、自分の製品をいつまでも買ってくれるいいお客さまなのですが。
新薬とジェネリック医薬品は別物、と言いました。
しかし、「同じ成分」で「同じ効き目」というのは、大雑把に言えば間違いではありません。
だとすれば、残りの判断基準は値段ですから、患者様がジェネリック医薬品を選ぶことは間違いではありません。
となれば、残る問題はリスクマネージメントです。
ジェネリック医薬品の内包するリスクを適正に患者に伝達すること。
それがジェネリック医薬品を使う上で大きなウエイトを占めるのです。
患者様に価格の安いジェネリック医薬品を使っていただく事は、よりよい医療の提供だと思います。
それをいかに効果的且つ安全に安心して使ってもらうか、ということが目標になります。
薬剤師の腕の見せ所です。
確かに難しいですけど、力を合わせてがんばりましょう。
蛇足。
もっと言えば、ジェネリックメーカーが新薬に対するアドバンテージをいかにアピールするか、ということに繋がると思います。
これはジェネリックメーカー自らのアプローチがなされるべきでしょう。
品質についてはどうでしょう。
私個人の意見として、後出しだったら先に出たものを超えて当たり前、だと思っていますので、品質についてのクレームというのは致命的だと思うのですが・・・
安かろう悪かろう、じゃあジェネリック医薬品の意味が無いですからね。実際にそんな事ないと思いたいのですが。
まー、品質と言っても使っている分析機器で数字に差は出ますからね。
HPLCにしても、高さ1,000,000で飽和する機器とそうでないものでは検出限界に隔たりがありますし、新薬メーカーのバリデーションで使ったカラムの履歴も、どこまで追えるのやら。
微量不純物にしても、どこまで拾うかは分析者の考え方次第で変わりますし(0.01%ぐらいは当然拾うとして)。
システム適合性試験が通ったからと言ってそのSST自体が信頼できるのかと言うところも。
分析機器を公認メーカー指定とかにすれば差は少なくなりますけど、メーカーと官僚の癒着とか何とか言われちゃいそうですし。
どうしたらいいんだろうね。
ジェネリック医薬品について。
本ブログのこの辺の記事と合わせてお読みください。
↓
命と薬と思想の価値(1)
命と薬と思想の価値(2)
命と薬と思想の価値(3)
TVCMなどでも「ジェネリック医薬品」を盛んに宣伝しておりますが、そもそもどういうものかというのは詳しくは語られていません。
薬学知識の無い一般の患者様からみれば、「効き目は一緒でも安い医薬品なんだ、こりゃいいや」というイメージが真っ先に浮かぶでしょう。
だがしかし。
本当にその謳い文句は正しいのか。
そもそもジェネリック(generic)という言葉には「ノーブランド」とか「無印」なんて意味があります。
前述の本ブログ記事にも書きましたが、最初に開発した医薬品にはパテントが発生します。そのライセンス料はもちろん価格に反映しますが、20~25年経てば特許期間が終了し、他のメーカーも販売可能になります。これがジェネリック医薬品です。
昔の言い方で言えばピカ新とゾロです。
何でジェネリック医薬品が安くなるのかと言うと、そもそもジェネリックの薬価が新薬より安くなるように定められている、というのもありますが・・・
ライセンス料が発生しない事や、新薬に比べて承認のための試験数が少ない事、つまり医薬品開発の手間が少ない事などから、価格を安く抑えることが出来ます。
まあ、この辺は前の記事にも書いてあるのであまり深くは触れません。
さて、このジェネリック医薬品は値段も安くて患者にとってはとてもメリットの大きいものなのですが、デメリットもあります。
いや、デメリットというよりはそもそもジェネリック医薬品というものへの間違った認識、でしょうか。
最初に忘れないで頂きたいのが、新薬とそのジェネリック医薬品は同じものでは無いと言う事です。
これはtb先記事の
先発品と後発品では製造方法や添加物が異なり、安定性や吸収性に差があるため、「(両者を)違うものと認識して使うことが必要」と指摘からも分かるように、新薬とジェネリック医薬品は、そもそも作り方が違います。
新薬の時にDMF申請した製造方法よりも、効率的でローコストな製造方法を検討し、製造コストを下げられる事がジェネリック医薬品の強みです。
しかし。
製造方法が違うと言う事は、出来たものは別物、と言う事です。
安定性や吸収性、つまり物性もバイオアベイラビリティも同一ではないです。同等ではありますが。
さらに、医薬品の有効成分というと、それ一つでしかイメージしないと思いますが、実際には微量な不純物が存在します。
この不純物のプロファイルというのは製造方法や設備が変われば別物になります。
それ故、「同じ成分」というのはあくまで「同じ成分を最終化合物として製造しました」ぐらいの意味でしかありません。
それが新薬よりも高純度かもしれないし純度が下がっているかもしれませんが、別物である事には変わりありません(純度下げる事は無いでしょうが・・・)。
また、下記のような指摘があります。
後発品の効き目は先発品と同じと印字されている処方せんがある。生物学的同等性は証明されているが、治療学的同等性は証明されておらず、(厳密に言えば)効き目が同じという表現は不適切即ち、新薬とジェネリック医薬品で薬物動態は調べるけど、治療効果については省略される、って事です。
この辺はちと補足しますと、新薬は3phaseの治験を行い、健常者及び当該疾病患者に対して、薬物動態やら治療効果やら副作用やらをきっちり調べるのですが、ジェネリックについては健常者投与で体内動態を調べて新薬と同等だと言えればOK、ということです。
もちろん体内動態が同等なら薬効も同等、という原理は科学的判断に基づくものですが、実際にジェネリック医薬品の治療効果は調べていない、という突っ込みも当然うなずけます。
不純物プロファイルが違えば、新薬には無い不純物によって副作用が出たり出なかったりすることも予想できますし。
このように、ジェネリック医薬品と言うのは、単に安いだけの医薬品ではないと言う事をしっかりを覚えておくべきです。
tb先の記事で一番気になったのがこの部分。
後発薬は効かないと信じ込み、「効かない」と主張している患者に遭遇したこともあったと話した。これこそ「ジェネリック」という聞き慣れない言葉の罠じゃないでしょうかね。
これはマイナスのプラセボ効果ではありますが、逆にプラスに働く人もいたりして。
新薬メーカーから見れば、自分の製品をいつまでも買ってくれるいいお客さまなのですが。
新薬とジェネリック医薬品は別物、と言いました。
しかし、「同じ成分」で「同じ効き目」というのは、大雑把に言えば間違いではありません。
だとすれば、残りの判断基準は値段ですから、患者様がジェネリック医薬品を選ぶことは間違いではありません。
となれば、残る問題はリスクマネージメントです。
ジェネリック医薬品の内包するリスクを適正に患者に伝達すること。
それがジェネリック医薬品を使う上で大きなウエイトを占めるのです。
患者様に価格の安いジェネリック医薬品を使っていただく事は、よりよい医療の提供だと思います。
それをいかに効果的且つ安全に安心して使ってもらうか、ということが目標になります。
後発品のメリットやデメリット、製品ごとの特徴について、分かりやすく適正な情報を提供することが、薬剤師の行う説明ではないかそう。
薬剤師の腕の見せ所です。
確かに難しいですけど、力を合わせてがんばりましょう。
蛇足。
患者への情報伝達に薬剤師が頭を悩ますのは、先発品と後発品の同等性をどのように評価すべきかが明確ではない上、後発品の品質や副作用に疑問を投げかける報告も少なくないことが背景にある新薬とジェネリック医薬品の同等性をどのように評価するか。
もっと言えば、ジェネリックメーカーが新薬に対するアドバンテージをいかにアピールするか、ということに繋がると思います。
これはジェネリックメーカー自らのアプローチがなされるべきでしょう。
品質についてはどうでしょう。
私個人の意見として、後出しだったら先に出たものを超えて当たり前、だと思っていますので、品質についてのクレームというのは致命的だと思うのですが・・・
安かろう悪かろう、じゃあジェネリック医薬品の意味が無いですからね。実際にそんな事ないと思いたいのですが。
まー、品質と言っても使っている分析機器で数字に差は出ますからね。
HPLCにしても、高さ1,000,000で飽和する機器とそうでないものでは検出限界に隔たりがありますし、新薬メーカーのバリデーションで使ったカラムの履歴も、どこまで追えるのやら。
微量不純物にしても、どこまで拾うかは分析者の考え方次第で変わりますし(0.01%ぐらいは当然拾うとして)。
システム適合性試験が通ったからと言ってそのSST自体が信頼できるのかと言うところも。
分析機器を公認メーカー指定とかにすれば差は少なくなりますけど、メーカーと官僚の癒着とか何とか言われちゃいそうですし。
どうしたらいいんだろうね。
最近のコメント