科学者のプライド2006年06月29日 14時18分38秒

早大・松本教授に論文データねつ造疑惑、学会が調査へ
(by 読売新聞さま)


またか。

ちょっと前にもソウル大学の黄教授による研究データの捏造疑惑があったばかりなのにな。
もっとも今回のは2001年当時のペーパーについての真偽が問題なのではあるが。

単なる間違いや勘違いならばまだ許せるが、意図的だとしたら同情の余地など無い。



科学者たるもの、自分の研究課題に大しては考えうる限りフェアでなければならない。
自分にとって都合の悪いデータが見つかったとして、それを隠蔽する事は科学者として失格である。
ネガティブデータはきちんと評価し、考察していくのは当たり前の事。

ましてポジティブデータそのものが捏造なんてのははっきり言って論外である。
科学者とか名乗んな。

科学と言う分野は、あらゆる政治的宗教的その他諸々の立場の影響を受けてはならない。
その事は、絶対に忘れてはならん。



一つだけ擁護するとすれば、大学研究室は常に金が無い。
研究と言うものは結構な人的時間的金銭的費用が発生する。
文部科学省からの資金援助が欲しいのは分かる。

ものつくり日本を名乗るならば、研究には惜しみなく金を出して欲しいものだ。

もっとも、研究室の側でもコスト削減を徹底する必要はあるが。
金が無いなら頭を使おう。

ワインの香り2006年05月28日 13時20分03秒

国民宿舎はらぺこ 大浴場の「ワイン化学」からのtb。
ワインの香りの科学(と甲州ワインの宣伝)について。

山梨の甲州ワインは香りが弱いらしい。
私は酒に疎いのでその真意はともかく、香りの原因物質についてちょっとしたサイエンスがあるとのこと。

白ワインの中に十円玉を入れると、ワインの香りが消えてしまうらしい。

十円玉の材質は銅。そしてワインの香りに大きく関与するのが3-mercaptohexanol(3MH)という直鎖アルコール誘導体。
構造式はこちら↓
3-mercaptohexanol

ワインの原料となるブドウはもちろんブドウ畑で育てます。
この際、ボルドー液という農薬を用いるそうです。
ボルドー液は塩基性硫酸銅水溶液。銅を含みます。

一方3MHは香り成分で、ブドウの中にはアミノ酸抱合体として存在します。システインとのジスルフィド結合かな?
これが発酵段階において、酵素的に切断され、3MHがフリーになって香りが生まれるそうです。

ブドウ栽培の際に、ボルドー液をあまり使わないで作ると、香り高いワインが出来上がるとのこと。
つまり、ワイン醸造の段階で、土壌からブドウに銅が移行したのか、或いはブドウの皮に付着したボルドー液由来からか、銅が多く含まれていると3MHと銅が結合し、香りが立たなくなる。
銅はしばしば平面4配位構造となりますから、銅原子1個につき、3MHが2分子くっついて安定化するのだと思います。


ワインの良し悪しは原料のブドウによって大きく影響を受けます。
それはその土地の気候や土壌の栄養状態が左右するのですが、土壌中の重金属含量によってもワインの香りは変わるのかもしれませんね。



言い訳。

本当は3MHの銅原子への配位状態と安定構造をMOPACで計算しようと思ったが、なんか収束しなかった。残念。
重金属を含む計算は難しいのか・・・ハミルトニアンはPM3で合ってると思うのだが。