個人と社会の妥協点2006年05月19日 22時32分19秒

日本テレビの「太田総理の私が総理大臣になったら・・・秘書田中。」で、同番組内で弁護士としての活動よりもテレビの方が力が入っている事をディスクローズした橋下弁護士が面白いマニフェストを掲げた。

昼間は部屋のカーテンを閉めることを禁止する!

これは個人主義やプライバシーの保護が行き過ぎてコミュニティが形成できていない事への対策らしい。
確かに昔に比べれば個人が通って地域社会の繋がりは希薄になっているが・・・

昔ながらの長屋的生活と言うのは、必ずしも理想ではない。
確かに個人が相互に顔見知りである事は非常にメリットが大きい事だし、出来ればコミュニティは形成した方が良い。
しかし、長屋に住むならば、そこのルールに従う必要がある。
このルールというのは生活上のルールだけではない。”空気”、”雰囲気”といった言葉で言い換えても良い。

昔だったらそれでも良かったが、今は長屋を運営するにはあまりにも個人が多様化しすぎている。
ある程度の共通項を見出せる人が特定地域に集まる可能性など、さほど高くは無いのだ。
だったら個人でいた方が手っ取り早い。



当の橋下弁護士はこうも述べている。
「お隣さんと顔見知りになる事で、不審者を排除できる」と。

コミュニティは異質なものを排除する。
ご近所で見知らぬ人がいれば即座に警戒するし、ルールに背いた者は即座に村八分になる。
それはコミュニティとして存続するための自動的な防衛反応であると言っても良い。
しかし。
この”免疫”というのは非常に勝手なものだ。気に食わないものは全て異質だと判断し、排除する。

例えば人よりちょっと目つきが悪いと言うだけで、犯罪予備軍扱いになる。

笑えない話である。
世田谷や杉並では、アキバ系であると知れたら性犯罪者扱いにされてしまうのではないか。
つまりは、コミュニティの包容力の問題である。
実際にはそういうコミュニティは些細な事で異質を排除するものだが。
いじめの問題も似たようなものである。
一度異質だと認識されてしまうと、それを回避する事は非常に困難であり、自然とその地域から押し出されてしまう。



現在個人主義が台頭し、集団生活が崩れつつある。
それは、人間というものが多様化した結果生まれた生活パターンであり、自然な流れであると言える。
お隣さんの顔も知らない、というのは寂しいものであるが、それを一方的に悪者扱いするのはいささか乱暴である。

しかし、コミュニティを否定はしない。
出来ればそういうまとまりがあった方が、コミュニティとしてのメリットを活用できる。
個人である事のメリットは、その個人にしか適応範囲が無いのだから。

現代において、多様化した我々自身がどのように他人と向き合うかと言う事が試されているのではないだろうか。

「地鶏と手打蕎麦 との山」2006年05月24日 20時32分43秒

梅しそおろしぶっかけそば

千葉県若葉区にあるお蕎麦屋さん「との山」。旧家がベースとなっていて、今の季節は緑がとても映えます。
蕎麦屋としては割と新しいのですが、とても美味しい蕎麦を出してきます。

今回頼んだのは、梅しそおろしぶっかけそば。

まだ夏には程遠いのですが、梅雨も終わればさっぱり涼しげなものが食べたくなると言うもの。
大鉢に蕎麦を盛り、大根おろし、鰹節、のり、刻みしそ、湯引きした鶏肉が外堀を埋め、天守閣にはしその葉の上に梅干様が鎮座ましましておられます。
徳利に入ったそばつゆをぶっ掛ける前に味見。
ただのそばつゆではなく、梅の味がします。こんなところにも一工夫。

そばつゆが梅風味で梅干もあると酸っぱいかな?と思いますが、絶妙なバランスです。
考えてみれば、全ての組み合わせが梅とベストマッチします。合わないことはありません。
鶏肉も余分な油は無く、かなりヘルシーな仕上がりです。
夏場のカンカン照りの最中に食べると、また美味しさが一層だと思います。

めんつゆに梅風味、というのは素麺ならよくやるのですけど、蕎麦でも合うものですね。とても美味しかったです。

ワインの香り2006年05月28日 13時20分03秒

国民宿舎はらぺこ 大浴場の「ワイン化学」からのtb。
ワインの香りの科学(と甲州ワインの宣伝)について。

山梨の甲州ワインは香りが弱いらしい。
私は酒に疎いのでその真意はともかく、香りの原因物質についてちょっとしたサイエンスがあるとのこと。

白ワインの中に十円玉を入れると、ワインの香りが消えてしまうらしい。

十円玉の材質は銅。そしてワインの香りに大きく関与するのが3-mercaptohexanol(3MH)という直鎖アルコール誘導体。
構造式はこちら↓
3-mercaptohexanol

ワインの原料となるブドウはもちろんブドウ畑で育てます。
この際、ボルドー液という農薬を用いるそうです。
ボルドー液は塩基性硫酸銅水溶液。銅を含みます。

一方3MHは香り成分で、ブドウの中にはアミノ酸抱合体として存在します。システインとのジスルフィド結合かな?
これが発酵段階において、酵素的に切断され、3MHがフリーになって香りが生まれるそうです。

ブドウ栽培の際に、ボルドー液をあまり使わないで作ると、香り高いワインが出来上がるとのこと。
つまり、ワイン醸造の段階で、土壌からブドウに銅が移行したのか、或いはブドウの皮に付着したボルドー液由来からか、銅が多く含まれていると3MHと銅が結合し、香りが立たなくなる。
銅はしばしば平面4配位構造となりますから、銅原子1個につき、3MHが2分子くっついて安定化するのだと思います。


ワインの良し悪しは原料のブドウによって大きく影響を受けます。
それはその土地の気候や土壌の栄養状態が左右するのですが、土壌中の重金属含量によってもワインの香りは変わるのかもしれませんね。



言い訳。

本当は3MHの銅原子への配位状態と安定構造をMOPACで計算しようと思ったが、なんか収束しなかった。残念。
重金属を含む計算は難しいのか・・・ハミルトニアンはPM3で合ってると思うのだが。