NSAIDと胃粘膜保護剤の関係2006年07月31日 11時11分11秒

【NSAIDs潰瘍】防御因子増強剤の予防効果は不十分 薬事日報さま)からのtb。

NSAID、非ステロイド性抗炎症薬(Non Steroidal Anti-Inflammatory Drug)は、一般的に常用する医薬品の代表格と言ってもいいでしょう。それは発熱時に服用する解熱鎮痛薬や、筋肉痛の時に使うシップ薬なども、このNSAIDに含まれます。
とてもポピュラーな医薬品です。
来る薬事法改正においては、”ランクB”相当になるのでしょうか?

痛みと言うのは患者にとって主訴となる場合が非常に多く、それ故痛みのコントロールというのは治療における最大の関心事であるかと思います、患者から見れば。QOLの向上って奴ですね。

NSAIDの抗炎症作用の作用機序は、シクロオキシゲナーゼ阻害です。
この記事でも少し触れていますが、炎症や発痛に関与するプロスタグランジン類は、細胞膜リン脂質からホスホリパーゼAにより切り出されたアラキドン酸が出発物質となります。アラキドン酸は次に、生合成経路(アラキドン酸カスケード)の最初の段階であり律速段階でもある5員環形成&環状ペルオキシド化によりプロスタグランジン骨格を形成しますが、この反応に関与する酵素がシクロオキシゲナーゼです。

このシクロオキシゲナーゼというのは体中色んなところにいて、胃にもいます。胃においてシクロオキシゲナーゼは防御因子の促進に関与するので、NSAIDを服用すると防御因子が劣勢になり、攻撃因子優位になるので胃が自己消化などを受けて荒れてきます。



と、分かる人には何を今さらと言うレベルの話はさておき。

私自身も現在リハビリ中につき、NSAIDを服用しています。
(骨折箇所ってのは実は大して痛まず、むしろ筋肉や機能の衰えた関節にシワ寄せが来ます)
もちろんの事胃薬も同時に服用しています。
私の場合、処方は建前上1日3回ですが、頓服的に服用してもよいという医師の指示もありまして、痛いときだけ飲んでいます。結果、おおむね1日1回です。
胃薬はプロトンポンプ阻害薬(PPI)を処方されました。かなり強力に効いてくれるのでありがたいのですが、1日1回なんですよね。NSAIDが1日3回処方なので、頓服的に服用しているとNSAIDが余っちゃうのです。
それで、さっさとPPIは無くなり、少しの間NSAIDのみ、1日1回で飲んでいましたら、さすがに胃が荒れました。
こりゃいかんと思い、今度は胃薬を1日3回処方の胃粘膜保護剤にしてもらいました。ただ、医師からはエビデンス無いよ、と突っ込まれましたがw
こうするとNSAIDも丁度飲みきることが出来ます。

今現在、NSAID+胃粘膜保護剤を1日1回で服用していますが、特に胃が荒れるとかは感じていません。


しかし、tb先記事によれば、

投与前は両群とも中程度のスコア2.4だったが、投与後はレバミピド群(胃粘膜保護剤)が2.2とほとんど改善しなかったのに対し、ファモチジン群(H2ブロッカー)は1.3と有意に改善。両群間の差も有意だった。傷害が完治したことを示すスコア・ゼロとなった患者は、レバミピド群が18.2%に対し、ファモチジン群は45.6%に上った。副作用は重篤なものはなく、発現頻度も両群同程度だった。
普段、頻繁に処方されている胃粘膜保護剤では不十分で胃粘膜は障害を受けてしまう、とのことで、ドクターの言うとおりでしたw
もっとも、私のようにある意味イレギュラーな服用方法というのは参考にならないと思いますが・・・
(薬剤師がノンコンプライアンスでどーすんだ、とかいう突っ込みはご勘弁頂きたく・・・医師の指示もあったので)
常時NSAIDを服用し続けている患者さんにとっては、こりゃ由々しき事態です。
というのも、胃が荒れ続ければ当然のことながら胃潰瘍コースです。

試験結果を受け、島根大の木下教授は「出血性潰瘍を起こした場合、2カ月の治療で約40万円かかる。比較した両剤とも薬価は1日60円程度で済むことを含め、治療の効果の高いH2ブロッカーの使用が奨められる」とした。昨年出版された胃潰瘍診療ガイドラインでも,日本で市販されている多くの胃粘膜防御系薬剤が,潰瘍治癒率からみてその使用根拠が不明確であるとされているが、胃潰瘍診療ガイドラインへの試験結果の反映については、「他の試験を含めた検討になる」とし、課題だとした。
本来関係ない疾病で病院に掛かっていたのに、痛み止めが原因で胃を悪くしちゃあ本末転倒です。
全ての人がそうなるとは言いませんが、不安の芽は早いうちから摘み取ってしまった方が良いでしょう。

幸いな事に、有意に胃粘膜障害を防止できるとされるH2ブロッカーやプロトンポンプ阻害薬は、副作用が少ない方です。
薬価にしても、服用回数を加味すれば、胃粘膜保護剤もH2ブロッカーもプロトンポンプ阻害薬も、大きな差にはならないと思います。むしろ確実に胃を守れる選択をする方が、トータルで見てお得でしょうね。

EBMの重要性が叫ばれて久しいですが、こういうデータは非常にタメになります。
私自身については、NSADIと胃薬の相関を我が身を持って試してみたいかな・・・と思ったりします。まあその前に早いところ脚治せと言われそうですがw

痛みと言うのは患者のQOL低下を招きます。
しかしNSAIDは確実に胃に悪いです。痛みでイライラしたりすればなおのこと。
このような、副作用による疾病と言うのをいかにゼロに近づけていくかと言うのが、医療関係者、ひいては薬剤師の責務であると思います。特に製薬企業の方々頑張ってください。

あと、薬剤師の端くれからのお願いです。
薬は処方どおりに飲みましょう。
私の場合医師の指示があったからこそ若干イレギュラーな服用になっています。
医師や薬剤師の説明どおりにきっちり飲んでくださいな。医薬品は安くはないし作るのも大変ですから。

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_ 薬のニュースは薬事日報 - 2006年07月31日 16時28分45秒







右から島根大教授の木下氏、奈良医大の矢島助教授、同大の山尾講師




 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)による胃潰瘍など胃粘膜傷害を防ぐために、多くのケースで胃粘膜を保護する防御因子増強剤が併用されているが、奈良県立医科大学などの研究チームが日本人を対象に臨床試験を行った結果、予防効果は不十分であることが明らかになった。試験では、胃酸の分泌を抑えるH2ブロッカーの方が胃粘膜傷害を有意に改善する結果だった。医学専門家として試験計画の助言などを行った島根大学医学部の木下芳一教授は、「現在の治療を見直す必要がある」と指摘し、NSAIDsによる胃粘膜障害にH2ブロッカーの使用を促している。

 臨床試験は、GCPに準拠し、関節リウマチなどでNSAIDsを使用している日本人患者の胃粘膜傷害の発症頻度と、保険適用範囲内での胃粘膜傷害の対処法を検討した。奈良県立医大の整形外科教授の高倉義典、同大第3内科教授の福井博の両氏が試験調整医師となって行われた。

 261人の患者を対象に実施した発症頻度の検討では、63%の患者に潰瘍や胃炎といった胃粘膜傷害が発現していることが判明。自覚症状がない188例でも58%に傷害が見つかった。

 薬剤別の発現率は、ジクロフェナク投与患者(36例)では83%。胃に比較的やさしいと言われ最もよく使われるロキソプロフェン(94例)でも58%、メロキシカムとエドトラク(42例)という新しいNSAIDsでも55%に上った。

 胃粘膜傷害を防ぐため、防御因子増強薬は96%に投与されていたが、62%の患者に傷害があり、同薬は傷害発生を防ぐには不十分であることが示された。

 その上で、傷害に対する対処法については、胃粘膜傷害があり(潰瘍患者は除外)、試験に同意した129人を対象に、防御因子増強薬のレバミピド(1日300mg)とH2ブロッカーのファモチジン(1日20mg)を無作為で割り付け、4週間投与して比較。傷害の程度が悪いほど高い値となる「LANZAスコア」を用いて評価した。

 投与前は両群とも中程度のスコア2.4だったが、投与後はレバミピド群が2.2とほとんど改善しなかったのに対し、ファモチジン群は1.3と有意に改善。両群間の差も有意だった。傷害が完治したことを示すスコア・ゼロとなった患者は、レバミピド群が18.2%に対し、ファモチジン群は45.6%に上った。副作用は重篤なものはなく、発現頻度も両群同程度だった。

 試験結果を受け、島根大の木下教授は「出血性潰瘍を起こした場合、2カ月の治療で約40万円かかる。比較した両剤とも薬価は1日60円程度で済むことを含め、治療の効果の高いH2ブロッカーの使用が奨められる」とした。昨年出版された胃潰瘍診療ガイドラインでも,日本で市販されている多くの胃粘膜防御系薬剤が,潰瘍治癒率からみてその使用根拠が不明確であるとされているが、胃潰瘍診療ガイドラインへの試験結果の反映については、「他の試験を含めた検討になる」とし、課題だとした。

 さらに同教授は、自覚症状がなくてものみ続ける予防的投薬も提案したが、いつまでのみ続け、傷害が完治した場合の服用の継続の要否については、別途試験が必要だとした。


奈良県立医科大学